レベルアップノート 「指導するにあたって」
3.NOT OVER COACHING

ここからは自戒を含めた指導方針です。

ノットオーバーコーチング「教えすぎるな!!」、指導者が最もジレンマに陥る言葉です。 もともと、指導者は、自分で学習し、いろんな引き出しをもっていて、あんなこと教えたい、これも教えたい、自分はこれだけ引き出しがあるぞと見せびらか したがる人種です。講習会を受けたり、他チームの練習を見たり、Jリーグの試合でどんなアップをしているのか、クールダウンはどんな風にやっているか、み んな勉強している人種です。ですから、その学習したことを教えたい、見せたい、学習成果を試したい、手取足取り教えたい、でもそれで良いのでしょうか。 上記のように正解が無数にあるサッカーで、すべての正解を教えきれるものではありません。すべての正解を知っているわけではありませんし、すべてを教える時間もありません。それを、ことあるごとに、こうしろ、ああしろと教えることが正しい指導なのでしょうか。

サッカーという競技は、試合中に監督、コーチがする仕事は余りありません。監督からサインが出てそれを見てからプレーするなんてことはありません。選手が自分で判断(それも、コンマ数秒という間にです)して、行動する。そんな競技ですから、まず自分で考えることが 重要な要素となります。どうすれば自分で考えるのか、放っておけば自分で考えるのでないか、それも一つの方法でしょう。でも何も教えないわけにはいかな い。教えすぎると自分で考えなくなる。じゃあどこまで教えら良いのか。まさにジレンマです。個々の、性格や、個性によって、どこまで教えるのかを判断すべ きなのでしょうか。正直、筆者にはわかりません。いまだに格闘中です、「教えて何が悪いんや」という思いもあります。ただ、教えすぎたら、自分で考えなく なるのは確かでしょう。 練習中から試合まで、事細かに指導する、端から見るとすばらしいコーチに見えます。でも、そのために、中学校、高校と進んだときに、教えられたことしかできない、自分で考えない、工夫しない、そんな選手になってしまっていたとしたら、これほど罪なコーチはありません。 ここの指導者もどちらかというと教え魔です。ゲーム中にショッチュウ指示の声が出ます。しかし、教えすぎていないか、指示しすぎていないかを常に自 問自答しています。また、コーチ同士でショッチュウ、コミュニケーション(飲みにケーションともいますが。)をとって、教えすぎないよう、選手を固めてし まわないよう注意しています。 Not over coaching、このジレンマに対し、私たちが、答えられるのはこの程度の回答です。もっと良い見解があると思います、ご意見のある方はご一報下さい。

脱、指示待ち症候群

指示待ち症候群、最近、よく聞く言葉です。上記のオーバーコーチングと重なる部分がありますが、教えすぎ、指示しすぎから出てくる症状で、指示さ れたことしかできない、指示されたこと以外の事象に対して対応できない、決して能力が無いわけではなく、長い習性によって、自分で判断して自分で考えるこ とが出来なくなっている症状です。 事細かく、指示、指導すればするほど、彼らは考える必要はなくなります。考える必要がなければ考えなくなる、それが人間です。結果、何をするにしても、指示がなければ出来ない、常に指示を待っている。そんな子になってしまいます。  こんな子がいました、休憩中に「コーチ、トイレいっても良いですか。」、練習中であれば、コーチの承諾を得てトイレに行く、至極当たり前のこ とです(練習中にいかなくても良いように休憩中にトイレに行くのベストですが)。でも、休憩中は、水分を取って、体を休めて、トイレに行く、そんなことの ための時間です。でも、彼は、指示、承諾をとりにきたのです。これは、まずいなと思いました。いま、トイレに行って良い時間なのか、だめな時間なのか、自 分で判断できなくなっている、コーチに承諾を得る事項なのかどうかもわからなくなっている。この子はまだ下級生だったのでその後、修正できたと思います が、このまま、大人になったとしたら………。 いま、こんな子がいたら、私たちはこう言います「自分で考えろ」。

脱、燃え尽き症候群 満足させない

燃え尽き症候群、一時期話題になった言葉です。最近は、あまり聞かなくなりました、日本にプロがなくて、高校サッカーで国立に立てたら、十分、もうサッ カーはやらない。サッカー選手として一流になるかどうかの瀬戸際で、彼らは燃え尽きて、満足してしまったのです。当時Jリーグもなく日本リーグでやるか、 大学でやるか、ぐらいで具体的な目標を持ちにくいこともありました。日本協会もこのままでは素質のある選手までも、高校でサッカーをやめてしまう、彼らの モチベーションを保ち、そのままサッカーを続けさせるためにはどうしたらよいか、一つは、具体的な目標を高校卒業後も持てるように、プロ化を促進する(実 際にJリーグを始めましたが)。 もう一つ、たとえプロになれなくても、サッカーを続けさせるには、どうしたらよいか、生涯スポーツとしてどうとらえるのか、こちらの方は地域スポーツクラブ(最近NPOなどで話題になっていますが)の設立など、歩みは遅いですが、少しずつ進んでいます。 そんな中で、私たちのような小学生を対象としたチームが何をなすべきか。ある人の話を引用したいと思います。 ある年、保護者のつてで、松本育夫(現サガン鳥栖監督)氏に、子ども達を指導して頂ける機会がありました。 練習後の氏を囲んでの懇親会の時の話です。  今の日本代表では、アジアは勝ち抜けない(当時はまだワールドカップは夢物語でした)とか、日本人の特性からしてどんなサッカーが良いのかなど途方もない話の中で、子ども達の指導について話が飛びました、その時氏は、指導の技術的な話は全くなく、こう言ったのです「満足させたらだめですよ」。 氏は続けて「あなた方4種(小学生)の指導者の役目は何ですか?日本代表を育てることですか、プロを育てることですか、何年も続けていればプロになる子も 出てくるでしょうが、そんなのは、ほんのごく一部の子供で、大半は大人になって普通の人になるわけでしょう。そのときに、彼らが、サッカーをやっている か、あるいはあなた方のようにサッカーに携わっているか。そちらの方が大事でしょう。そのためには、決して満足させないことです。日々の練習や、試合で、 チョット物足りないかなと言った頃合いにやめることです。」「子ども達が、もっとやりたいと言ったら、それはまた来週なと言っていなすこと。小学校で物足 りなければ、中学校で、中学校でやり残したら高校でといった感じで子供に次へ次へと意欲が湧くようにするべきでしょう。」「もういい、小学校でサッカーは 終わりなんて、もし、子供が言ったなら・・・・」 なるほどと思いました、彼らにサッカーに対する渇望を常に持たせる、もっとやりたい、その気持ちを持続させる。実際には言葉で言うほど簡単なことではあ りません、量が少なくても、内容がおもしろくなければ子供は飽きてしまいます。また、試合をやって負けてばかりでも同じです。でも、子供にサッカーを続け させるための大きなヒントの一つだと思います。 子供に満足させない、燃え尽き症候群を作らない、彼らが大人になって「コーチ、僕まだサッカーやってますねん」私たちは、この一言が聞きたいのです。

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